65歳以上の単身女性は5人に1人が「貧困層」です

2020/06/24
自民党政権から民主党政権に変化したことで我々は将来にちょっぴり期待が持てるようになったかもしれません。少なくとも、企業とお金持ちの味方しかしてこなかった自民党政権が約50年ぶりに本格的に政権の座から滑り落ちたわけですから何か新しい変化が起こることを期待せずにはいられません。

しかし、その一方で聞こえてくるのは、日本経済の落ち込みの長期化であったり、財源不足による財政赤字の急増といった「負の情報」ばかりです。日本のマスコミの体質にもよりますが、民主党政権になったからといって一気に私たちの未来がバラ色になるわけではなさそうです。

しかも、2008年の経済協力開発機構(OECD)の統計によると、日本の「貧困率」は全世帯で「14.9%」にも達するそうです。14.9%というのは、単純にいえば6人に1人です。さらに厚生労働省も独自の貧困率を発表し、15.7%(2007年)という数値を最近公表しました。

実は経済協力開発機構(OECD)や厚労省が発表した貧困層というのは「相対的貧困率」と呼ばれるもので、その国の中では全体と比較して貧乏だという意味です。経済協力開発機構(OECD)の中では、たしかに加盟国30ヵ国中ワースト第4位の成績で、メキシコ、トルコ、アメリカに次ぐ貧困率の高さということになりました。

しかし、日本の貧困層というのは「世界一豊かな貧困層」といわれており、実は他の地域の最貧層の7倍以上の収入があるといわれています。もともと貧困率には「相対的貧困率」と「絶対的貧困率」というのがあって、日本の相対的貧困層というのは所得114万円未満を指します。

月額10万円に満たない人が貧困層になるわけですが、たしかに金額ベースで見れば最低限の食べ物を確保するにも困る絶対的貧困層よりは高いかもしれませんが、日本の場合は物価も高く、生活保護世帯でさえ、ひとり当たり月額13万円程度といわれていますから、そう考えると日本の相対的貧困層の生活はかなり厳しいと見るべきでしょう。

要するに、日本は全体的に豊かなのですが、貧富の格差が非常に大きいということを意味しています。たとえば、日本の相対的貧困率を大きく引き上げている原因のひとつが「子どもがいるひとり親」世帯の貧困です。

ひとり親世帯に絞ってみると経済協力開発機構(OECD)加盟国30ヵ国中でダントツに高い「58.7%」(2008年報告書)にもなります。つまり、母子家庭などのひとり親世帯では全体の世帯にくらべて半分以下の収入しかない世帯が2世帯に1世帯はある勘定になります。

こうした格差に対して、民主党政権がどこまでカバーできるかはわかりませんが、恥ずべき現実であることはたしかです。ところで、内閣府の調査では、こうした貧困層はひとり親世帯だけではありません。実は、高齢化社会にもひそかに、そして確実に押し寄せています。

たとえば65歳以上の女性単身世帯の貧困率は2割に達するそうです。5人に1人の65歳以上の女性は貧困層に入るということです。こうした背景には、いうまでもなく日本の公的年金制度の制度上の欠陥があります。簡潔に説明すると次のような原因が考えられます。

1.厚生年金の場合、女性の平均受給額は男性にくらべてかなり低い
2.国民年金では1人当たり月額6万6,008円しかもらえない

たとえば、厚生年金の標準額というものが毎年厚生労働省から発表されていますが、夫が40年間サラリーマンとして働き、妻は専業主婦だった場合、年金計算の基礎的な指標となる「平均収入」が月額36万円だったとすると、夫婦が受け取れる標準的な月額の年金給付額は次のようになります。「平均収入」を「平均標準報酬月額」といいます。

夫婦で受け取れる厚生年金の標準額は23万2,592円(2008年3月末)になります。一方、社会保険庁が厚生年金に20年以上加入していた人を対象にしたアンケート調査によると平均の年金受給額は次のようになります(2005年3月末の月額)

・受給者全体・・・16万5,020円(年額198万241円)
・男性・・・18万9,989円(年額227万9,870円)
・女性・・・10万9,945円(年額131万9,342円)

つまり、約7万円ほどの男女格差があることがわかります。。この男女格差は加入期間の違いが原因だと社会保険庁は説明しています。

たしかに男性の平均加入期間が34年10ヵ月であるのに対して、女性は23年11ヵ月です。いい換えれば妻も24年近くしっかり働いて約11万円程度の年金がもらえれば、夫の19万円と合わせて30万円程度はもらえることになるわけです。30万円あれば割と豊かな老後といっても良いかもしれません。

要するに厚生年金の受給者全体の平均額は16万円程度、そして夫婦ふたりになって23万円程度、ただし女性ひとりなら11万円程度というわけです。もちろん年金収入が月額11万円では貧困層に入ることになります。